南條 史生
美術評論家・キュレーター

1972年慶應義塾大学経済学部、1977年文学部哲学科美学美術史学専攻卒業。国際交流基金等を経て、2002年より森美術館立ち上げに参画、2006年11月から 2019年まで館長、2020年より特別顧問。エヌ・アンド・エー株式会社代表取締役。1990年代末よりヴェニス・ビエンナーレ日本館を皮切りに、台北、横浜、シンガポール、北茨城、ホノルル、北九州等国際展で総合ディレクションを歴任。2019年の森美術館の「未来と芸術展:AI、 ロボット、都市、生命―人は明日どう生きるのか」では自ら企画を担当。著書として「ア ートを生きる」(角川書店、2012年)等。

KAMADOはアートや工芸の生産の支援、市場への紹介、作品/作家の紹介広報、といったアートをめぐる複雑でトータルなエコシステム全体を対象として、その発展を支援しようとする大変珍しい活動だ。ここまでアートの背景を考えて支援を考えた人も少ないのではないだろうか。まずは入口を作り、そこから興味を持って関わる人によって、システムのどこに興味を持つか、さまざまだろう。作品を見せつつみんなの興味を引き、そこから支援するところまで持っていくところが、なかなかに意義深いと思った。というのはやはり今、日本の若手作家に必要なのは、しっかりした支援活動だと思うからだ。またそうした作業の中に、国際的な情報発信も入れているので、活動の広がりを感じる。やはり日本の現代のクリエーションを世界に知らせていくことは喫緊の課題だ。それはパブリックディプロマシーに通じ、また日本経済の再構築にもつながる話なのだ。アートがカマドの中の火のように燃え上がり、日本の文化を導くトーチのようになればいいと思う。今後の発展を期待したい。